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第16回 ハマナスの語源を探る

バラ科を代表するハマナスの海岸に拡がる群落は見事で、道民には馴染み深い。
1978年(昭和53年)には ”北海道の花” に指定されている。
皇后陛下のお印としても知られる。
最近まで身近なモノを取り上げ、その名前の由来を探るNHKのバラエティー番組があったので、
それにあやかりハマナスの由来を探る古(いにしえ)の世界に誘(いざな)いたい。

文 姉帯正樹

ハマナス Rosa rugosa の群落
(紋別市・撮影:『faura』編集部)

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(寸評)ハマナスの語源は北陸方言ハマナスビ

北海道大学客員教授 姉帯 正樹

「波末奈須比語源説」の概要

江戸時代中期からハマナスの語源は浜茄子とされてきた。しかし、ハマナスは浜梨が訛った名称で、ハマナシを正しい和名とする説が大正時代に出された。現在は2種類の和名が用いられている。筆者は『享保元文諸国産物帳』『越後粟島の方言』などの新旧文献から従来の浜茄子語源説を支持、ハマナスは1200年ほど前に北陸地方で生まれた古称ハマナスビ(波末奈須比)から派生し、後に北国においてハマナシに転訛したという新説を提唱した1-4)

  1. 1)姉帯正樹:ハマナス語源新考―北陸方言ハマナスビからハマナスへ―,薬用植物研究,40(2),1-10(2018)
  2. 2)姉帯正樹:ハマナス語源新考 補遺,薬用植物研究,41(2),60-67(2019)
  3. 3)姉帯正樹:北海道の花「ハマナス」の語源を探る,faura,61,36-41(2019)
  4. 4)姉帯正樹:ハマナスとハマナシ、二つの和名を巡って,faura,62,50-53(2020)
「波末奈須比語源説」発表後のあれこれ

筆者が本語源説を発表したのは2018年12月末で、翌年1月中旬より関係者に別刷を送付した。熱烈なるハマナス派の仙台市野草園管野邦夫(1929-)名誉園長は自説が支持されたことに大喜び、その縁で河北新報でも新語源説が紹介された。

2020年5月、その管野氏からハマナス及びハマナシの和名論争に関する1990~92年の資料が寄贈された。その一つに「ハマナスに軍配」の記事が掲載された『ABOC通信(No.18)』があった。更にはアボック社毛藤圀彦社長(現会長)と管野氏の間で意見交換があったことから、同社へも論文及び解説文第1~4報を送った。毛藤会長からは「これでハマナス、ハマナシ論争は決着した」との嬉しいお言葉を頂戴し、今回の第3及び4報の転載と相成った。

植物民俗研究家・深津正(1913-2006?)氏と管野氏とのやり取りは、本論争を語る上での第一級の資料であった。筆者は深津氏の『植物和名の語源探求』(2000年)で本論争を知ったため、同氏とも喜びを分かち合いたかった。

最も興味をひかれた文献は、「管野邦男(ママ)、坂﨑(ママ)信之:ハマナスとハマナシ論、日本植物園協会誌、第26号、111-122頁、1992年3月」であった。これはハマナス、ハマナシのどちらで展示しているかについて国内の78植物園にアンケート調査した結果を示すと共に、同協会名誉会員である両氏の往復書簡を掲載したものである。何度も議論し色々と調べるうちに、ハマナシ派の坂嵜(1926-2021)氏は「古くには、ハマナス、あるいはハマナスヒ(ハマナスビ)と呼ばれたのかもしれません」とハマナス派に加担することになった。同氏はハマナスビ(波末奈須比)に気付きながら、その裏付けを示すことはできなかった。

今のところ、ハマナシ派からの表立った反論はない。筆者の新説により、『広辞苑』などが書き換えられることを切に望んでいる。

今回の転載に当たり、アボック社毛藤圀彦会長、管理部小山道代氏、制作担当西原彩子氏及び有限会社ナチュラリーfaura編集長大橋弘一氏に深謝します。

姉帯正樹(あねたい まさき)プロフィール

筆者近影 2022年8月
1949年 北海道後志管内喜茂別町生まれ
1968年 私立函館ラ・サール高等学校卒業
1972年 北海道大学理学部化学科卒業
1977年 北海道大学大学院理学研究科化学専攻博士課程修了、理学博士
1978年 アルバータ大学化学科博士研究員
1980年 日本学術振興会奨励研究員
1982年 北海道立衛生研究所勤務
2010年 北海道立衛生研究所定年退職、再任用
2012年 北海道大学客員教授

北海道大学大学院先端生命科学研究院招へい教員(~現在)

2014年 北海道立衛生研究所退職
2017年 北海道大学大学院薬学研究院招へい教員(~現在)

道立衛生研究所では薬草、山菜、毒草、アイヌ民族有用植物などの化学的研究に従事。生薬の調製中における成分含量の変動を解明。薬用植物園に「山菜と毒草コーナー」を設け、各々の見分け方講習会を開催、後に山菜展に発展させた。更には、薬草観察会開催、「アイヌ民族有用植物コーナー」設置など、道産植物活用法の普及に尽力。

定年間際、カンゾウ類の毒性を調べた際、小野蘭山の『本草綱目啓蒙』にその答を見つけ、以後、本草学に傾注。現在は食用植物、救荒植物、薬用植物の歴史的、文化的、科学的側面を中心とした文理融合の執筆活動を続け、保科喜右衛門のペンネームで北海道自然雑誌『faura』に「北方本草誌」連載中。

著書

  • 原田正敏編:繁用生薬の成分定量、廣川書店、1989(分担執筆)

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