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第二十四話 中・南米の植物園

系統的コレクションも標本も充実

中・南米、つまりラテン・アメリカ地域で、最も古く、最も重要な植物園は、ブラジルのリオ・デ・ジャネイロ植物園(Jardim Botânico do Rio de Janeiro)である。植え育てられている豊富な植物、標本館の腊葉ともに、南米の植物の研究に不可欠な資料を保有し、私も『新熱帯植物誌』(現在刊行中)の一部の著作のため数回訪れたことがある。

この植物園はキリストの像で知られるリオのコルコバード丘のイパネマ側の麓にあり、濃い緑が鬱蒼と茂っている。1808年の開設だから、樹木が大きく育っているのも当然である。面積54万平方メートルの園内には、樹齢170年といわれるダイオウヤシの並木が交差し、ブラジルを中心とした7,200種もの熱帯・亜熱帯植物が植えられ、植物関係の人物の胸像が立ててある。

そのひとつは、J・B・ロドリゲス(Rodriguez)の胸像である。彼は、ブラジルの植物学者で、ヤシ科やサトイモ科を中心として、ブラジル全土の植物を精力的に集め、1896年から1909年まで、この植物園の園長であった。

そのほかのひとつに、C・P・マルティウス(Martius)の像がある。このドイツの植物探検家は、メキシコのマクシミリアン皇帝(在位1864~67)の援助でブラジルを踏査し、『ブラジル植物誌(Flora Brasiliensis)』全十五巻を編纂した人である。この植物誌は、1840年から1906年にかけて出版され、多くの図版も入っていて、南米のまとまった植物誌としては現在唯一のものである。この時の歴史的な植物標本が、ドイツのミュンヘンにあるバイエル州立植物研究所に保存されている事は前(第二十一話)に述べた。

園内の生植物では、ヤシ科のコレクションが最も多く、ほかにタケ類、サトイモ科、バショウ科、ラン科、シダ類が多い。大きなタビビトノキの木立も印象的であった。

園内には、植物の系統的コレクションのほかに有用植物園があり、珍しい薬草のリオトコン、ブラジルナッツノキ、カシューナッツ類、カカオ類などが見られる。標本館には、20万点の腊葉、6,000点の熱帯アメリカ材の標本、5,000点あまりの果実標本が集められ、3,000冊の単行本と2,200部の定期刊行物を収めた図書館が併設されている。

ベネズエラの首都カラカスの植物園は、国立植物研究所の付属で、面積は65万平方メートルと小さいが、小さな薬用植物園のほかに、南米北部を故郷とするパパイア類その他の果樹が多く、サトイモ科、パイナップル科、シュウカイドウ科も多い。ベネズエラのロライマ高地は独特の植物相で知られるが、カラカス植物園は、この地を反映して、ほかではあまり見られない植物がよくそろっている。標本館には約50万点の腊葉があり、T・ラッサー(Lasser)所長が始めた『ベネズエラ植物誌』の編纂が進められている。

西インド諸島とメキシコの植物園

イギリスは、18世紀の中ごろから末にかけて、当時の英領西インド諸島の七つの島に植物園を開設し、旧世界の有用植物を新熱帯へ移入しようとした。ショウガ、ニクズク、コーヒーノキ、バナナなどが、これらの植物園で育成されたが、このなかで現在も残っている三つが、ジャマイカ島のホープ・ガーデンとキャスルトン・ガーデン、それにヒル・ガーデンである。

ホープ・ガーデン(Hope Gardens)は、首都キングストン市にあり、1857年に開設されたが間もなく閉鎖され、1871年に農業試験所として再開された。一時は91万平方メートルの敷地には、熱帯花木類と花卉植物を中心とする900種あまりの植物があり、ベニウチワ属や西インド諸島のランの収集品等があったが、現在は植物園というより都市公園の方向に向っている。

ジャマイカ島には、もともとホープ・ガーデンを含む少なくとも四つの植物園があり、そのひとつキャッスルトン・ガーデン(Castleton Botanical Gardens)にはスパイス類や熱帯果樹、ヤシ類などの有用植物が多い。バス・ガーデンでは、バウンティー号の反乱で知られるブライ艦長がタヒチ島で集めたパンノキを導入栽培したが、今はこのガーデンは存在しない。ヒル・ガーデンには、1870年ごろ南米アンデス地方産のキニーネの原料植物であるキナノキが導入育成された。この植物園には数百万平方メートルの保存林があって、1903年から約10年間、アメリカのニューヨーク植物園にリースされ、熱帯植物の増殖研究に利用された。現在もシンコナ植物園の名で、コーヒーで有名なブルー・マウンティン山地に残るが、荒廃している。

カリブ海のアンチル列島では、ジャマイカのほかに、バルバドスやマルチニックにも特徴ある植物園が存在する。バルバドスにはアンドロメダ・ガーデン(Andromeda Gardens)という小形の植物園があり、バショウ科のストレリチアとショウガ科の花卉に重点を置いている。ここでは隆起サンゴ礁の岩を上手に利用して、着生植物を配置し、ブーゲンビレアを配して小ぢんまりした熱帯庭園も作っている。私が訪問した時にはフィリピンから導入された珍しいヒスイカズラの花と果実も見られた。

他方、マルチニックのバラタ植物園(Le Jardin de Balata)は公立で、適度に雨の降る山の中腹の斜面と谷を用い、熱帯雨林を生態系保護地として取り入れているほかに、サトイモ科、ヤシ類、ドラセナ類、ラン科が中心である。特に力を入れているのはパイナップル科のプロメリア類のコレクションである。プロメリア・ハウス2棟のほかに、林の一部を利用して、多くのプロメリア類を樹幹に着生させたり、地上生の種類を下植生に植え込んだりしてユニークである。

メキシコ市には、1952年ごろには二つの植物園があったが、メキシコ国内の植物分類学の衰退や、大学の経営方針に左右されて、ひとつの植物園はなくなり、現在はメキシコ国立自治大学生物学科付属植物園だけになった。

メキシコ市は半乾燥地だから、温室は加湿機構をもち、熱帯や亜熱帯雨林の植物が育成できるようになっている。屋外園は市外にあり、リュウゼツラン属のコレクションが素晴らしい。パイナップル科も多く、これらにメキシコ産植物を加えて、約3,000種が集められている。

この植物園の建設と発展に大きな貢献をした日系人の松田英二(故人)元メキシコ国立大学教授は、以前は台湾植物の採集家であって、同大学の所蔵標本30万点のうち2万点は松田教授の標本である。

ラテン・アメリカに見られる新しい息吹

ラテン・アメリカでは現在、植物研究が盛んになりつつあり、あちこちに新しい植物園の誕生が見られる。成功例として、ドミニカのラファエル・モスコソ国立植物園(Jardin Botánico Rafael Moscoso)である。

ここは、1972年からニューヨーク植物園のB・マグアイア(Maguire)上級研究官の指導のもとに建設されたもので、約150万平方メートルの敷地にヤシ、タケ、パイナップル、サトイモ、薬用植物、ラン、熱帯樹木、シダ園がそれぞれ設けられ、花時計花壇、赤い太鼓橋のある日本庭園、遊園区域などもある研究植物園である。すでに中型の標本庫を整え、ニューヨーク植物園・同市立大学提携大学院の卒業生であるT・ザノニ(Zanoni)博士をリーダーとする、イスパニオラ島植物探索と植物誌編纂計画が強力に推進されている。

ラン類を始めとして、サトイモ科等の熱帯植物も豊富なコロンビアには、新しい植物園が少なくとも六つ位あるが、中でもメデジンの植物園(Jardin Botánico Joaquin Antonia Uribe)は極めて美しい花園でもある。ラン園を中心に、有用植物園、カシューナッツの属するウルシ科のコレクションと地元のアンティオキア州の珍しい熱帯植物の収集が立派である。ここは1973年に整備された。

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